「もっと頑張らなければ」
「自分は努力が足りないのかもしれない」
毎日を苦しく感じるとき、自分を責めていませんか。
しかし、あなたが疲れている原因は、努力不足ではないかもしれません。
世の中から、矛盾する二つの「正しさ」を押しつけられている可能性があります。
どちらを選んでも責められる環境にいれば、誰でも心が疲れてしまいます。

どちらを選んでも責められる社会
私たちは日頃から、多くの矛盾した言葉を聞かされています。
「将来のために、お金を貯めなさい」
そう言われる一方で、
「若者がお金を使わないから、景気が悪くなる」
とも言われます。
お金を貯めても責められ、使わなくても責められるのです。
人間関係でも同じことが起きます。
「一人で抱え込まず、人を頼りなさい」
そう教えられたのに、実際に助けを求めると、
「人に甘えるな」
「自分のことは自分でやれ」
と言われることがあります。
家族との時間を大切にするよう勧められても、仕事を早く切り上げれば、「責任感がない」と見られる場合があります。
これでは、何を選べばよいのか分からなくなって当然です。

心を疲れさせるダブルバインド
矛盾する二つの命令を受け、どちらに従っても責められる状態は、心理学でいう「ダブルバインド」に似ています。
例えば、上司から、
「分からないことは、すぐに質問してください」
と言われたとします。
しかし、実際に質問すると、
「それくらい自分で考えなさい」
と怒られます。
次から自分で考えて行動すれば、今度は、
「なぜ勝手に判断したのですか」
と責められます。
質問しても怒られ、自分で考えても怒られる。
この状態が続けば、人は何をするにも不安になります。
やがて、自分の判断よりも、相手の顔色を優先するようになります。

まじめな人ほど疲れてしまう
矛盾する要求に苦しみやすいのは、決して心が弱い人ではありません。
むしろ、責任感が強く、まじめな人です。
「期待に応えたい」
「迷惑をかけてはいけない」
「正しい人間でいたい」
そう考える人ほど、両方の要求を満たそうとします。
仕事も頑張る。家族も大切にする。お金も貯める。消費して社会にも貢献する。困ったときは人を頼る。でも、相手の負担にはならないようにする。
しかし、すべてを完璧に満たすことはできません。
無理を続ければ、体は動いていても、心の中では電池切れが起こります。
あなたが疲れたのは、怠けたからではありません。
矛盾する二つの正しさに、まじめに応え続けたからなのです。

世間の正しさは立場によって変わる
世間の意見は、いつも同じではありません。
会社は「仕事を優先してほしい」と考えます。
家族は「もっと一緒にいてほしい」と願うかもしれません。
経済を動かす側は消費を求めますが、老後を考える人は貯金を勧めます。
それぞれが、自分の立場から正しいことを言っているのです。
つまり、世間のすべての声に従おうとすれば、必ず矛盾が生まれます。
だから、全員を納得させようとしなくていいのです。
世間の正解を集めるより、自分が何を大切にするのかを決める必要があります。

自分の基準を取り戻す
迷ったときは、次の三つを自分に聞いてみてください。
- 私は本当は、どう生きたいのか
- 何を守るために、この選択をするのか
- この道を選んだあと、自分の心は少し楽になるか
家で静かに働きたい人もいます。
収入よりも、心の平和を守りたい人もいます。
大勢と競争するより、自分のペースで誰かの役に立ちたい人もいます。
どれも間違いではありません。
自分の基準で選べば、誰かに反対されることもあるでしょう。しかし、すべての人に認めてもらうために、自分の人生を差し出す必要はありません。

あなた自身の人生を始めよう
あなたが苦しいのは、能力がないからでも、努力が足りないからでもありません。
周りの矛盾する期待に、懸命に応えようとしてきたからです。
もう、すべての声に従わなくて大丈夫です。
ときには誰かをがっかりさせても、自分の心を守る選択が必要です。
静かな場所で、こう問いかけてみてください。
「私は、本当はどう生きたいのか」
その答えは、すぐに出ないかもしれません。
それでも、自分の心に問い続けることで、少しずつ進む方向が見えてきます。
世間の答えではなく、自分が納得できる答えを選ぶ。
その瞬間、他人の期待を生きる毎日が終わり、あなた自身の人生が始まるのです。