テレビやSNSを見ていると、毎日のように多くの意見が流れてきます。
「これが正しい」
「普通はこうするべきだ」
「今はこれを選ぶのが常識だ」
同じ意見を何度も目にすると、いつの間にか自分も、それが正しいと思うようになります。
しかし、その考えは本当に自分で選んだものでしょうか。
もしかすると、世の中で人気のある意見を、自分の考えだと思い込んでいるだけかもしれません。
多数派の意見が正しいとは限らない
人間には、周りと同じでいたい気持ちがあります。
自分だけ違う意見を持つと、不安になるからです。
多くの人が支持している意見を見ると、詳しく調べていなくても「きっと正しいのだろう」と感じます。
特にSNSでは、いいねの数や再生回数が目に入ります。
数字が大きいほど、その意見には価値があるように見えます。しかし、人気があることと、正しいことは同じではありません。
大勢が同じ方向へ進んでいるときほど、一度立ち止まる必要があります。
「みんなが言っているから」ではなく、「自分はなぜそう思うのか」と問い直すことが大切です。

考えるとは、自分自身と対話すること
哲学者のハンナ・アーレントは、考えることを、自分自身との静かな対話として捉えました。
私たちの中には、行動する自分と、その行動を見つめるもう一人の自分がいます。
何かを選ぶ前に、
「これは本当に正しいのか」
「誰かの言葉を、そのまま信じていないか」
「自分の心は納得しているか」
と問いかけるのです。
しかし、スマホを見続けていると、この対話ができなくなります。
次から次へと流れてくる情報によって、自分の声が聞こえにくくなるからです。
自分の考えを取り戻すには、一人で静かに過ごす時間が必要です。
一人になることは、世の中から逃げることではありません。余計な声から離れ、自分の心へ戻るための大切な時間なのです。

都合の悪い事実ほど大切にする
博物学者チャールズ・ダーウィンは、自分の考えと合わない事実に出会ったとき、それを忘れないように記録していたと伝えられています。
人は、自分に都合のよい情報を信じたくなるものです。
反対に、自分が間違っているかもしれないと思わせる情報は、無視したくなります。
しかし、それでは考えが深まりません。
本当に考える力がある人は、自分と違う意見をすぐに敵扱いしません。
「なぜ、この人はそう考えるのだろう」
「自分が見落としていることはないだろうか」
と、いったん受け止めます。
すべてに賛成する必要はありません。ただ、自分にとって都合の悪い情報にも目を向けることで、思い込みに気づけます。

意見を変えることは負けではない
一度言ったことを変えると、「信念がない」と思われることがあります。
しかし、新しい事実を知って考え直すことは、恥ずかしいことではありません。
むしろ、勇気のある行動です。
昔の自分には、今持っている知識がありませんでした。経験が増えれば、見える景色も変わります。
それなのに、過去の自分が出した答えを守り続ける必要があるでしょうか。
大切なのは、意見を変えないことではありません。
間違いに気づいたとき、素直に修正できることです。
考えを改めることは、自分を否定することではありません。昨日よりも一つ学び、成長した証しなのです。

静かな問いが自分の人生を守る
世の中の空気は、いつも正しいとは限りません。
昨日まで褒められていたものが、今日は批判されることもあります。
そのたびに周りの意見へ合わせていたら、自分が本当に望む生き方が分からなくなります。
だからこそ、ときどきスマホを置いて、一人で静かに問いかけてみてください。
「これは本当に、私の考えだろうか」
「私は何を大切にして生きたいのか」
すぐに答えが出なくても大丈夫です。
自分に問いかける習慣を持つだけで、世の中の空気と少し距離を置けるようになります。
本当の自分を持つ人とは、いつも正しい人ではありません。
間違う可能性を受け入れながら、何度でも考え直せる人です。
その静かな姿勢が、群衆の波からあなたを守り、自分の人生を選ぶ力になります。